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0 コロナ禍だからこそ街の魅力を再発見した「しなけんツアー」

2020年は新型コロナウィルスの世界的な蔓延により、日常生活がガラリと変わってしまいました。4月に緊急事態宣言が発令され、「Stay Home」をスローガンに不要不急の外出が制限され、それを機に家の周辺など今まで見落としていた街の風景に目がいくようになった人も多いのではないでしょうか?

私たち「東京建築アクセスポイント」は品川区にある歴史的・魅力的建築物調査の業務委託を受け、今年で3年目になります。調査結果を踏まえ、建物所有者の協力を得て、企画・運営しているのが建物公開イベント「オープンしなけん」です。しかし今年はコロナ感染防止を鑑み、不特定多数の集客を図る建物公開を避けることにしました。その代わり参加人数を絞り、ツアー形式でイベントを実施しました。コロナ禍の今年だからこそ、歩きながら品川区にある魅力的な建築を巡るツアーは、最適の企画だったのではないかと思います。

建築物調査による魅力の発掘
建築イベント「オープンしなけん」は、建築物調査を下敷きに企画しています。地元の人に愛されている建築、地域に昔から根付いている建築など7つの指標に基づき、魅力的な建築を発掘するのが調査の目的です。通常の調査では品川区に事前登録した調査員によって行われています。建築の専門家と、一般・学生などそうでない人と3、4人で混合チームを作り、住宅地図を片手に目視による悉皆調査を行います。その後、建物所有者へコンタクトを取り、深く掘り下げるヒアリング調査も行っています。「桜田通りにある名建築」で取り上げた円形のコンクリート造のお寺「日蓮宗妙建山本立寺旧本堂」はまさに昨年の悉皆調査で見つけたものです。桜田通りから奥まった場所にあるのですが、調査時に一目見て、私はその力強い造形美に魅了されました。そして後日、住職に旧本堂の建設経緯などをお伺いし、今回のツアーで紹介するに至りました。

イベント実施まで
今年は例年通りのイベント開催とはいかず、コロナの感染者数の推移に注視しながら、品川区建築課と打ち合わせを重ね、万全を期してイベント開催に臨みました。11月中旬より感染者数の増加が顕著となり、実施するかどうかはギリギリまで危ぶまれましたが、品川区の英断により開催する運びとなりました。結果として参加者からのキャンセルもわずかで、皆さんがとても楽しみにしていたことがわかりました。最終的に10ツアー、定員8名のところ、当日参加者は71名。募集を東京都民に限定しましたが、往復はがきによる申し込みの結果、平均倍率3.5倍、最も多いツアーで6.3倍でした。ツアー参加後のアンケートの内訳をみると、品川区内の参加者が43%、区外が57%。建築関係以外の職業が多く70%。嬉しいことに初めての参加が67%ということで、認知度の高まりが現れています。意外にもチラシによる効果が最も大きく、38%がチラシを見てイベントを知ったようです。満足度に関しては56%が「大変満足」、残りの43%が「満足」という結果で、ホッと胸をなで下ろしています。

スタッフとの連携
イベント当日、大きな問題もなくスムーズに実施することができたのは、サポートしてくれたスタッフのおかげです。是非、ツアーレポートをご参照ください。また、今年は品川区建築課と例年に増して一致団結し、ともにイベントを進めたことが成功に繋がったと思います。和氣副区長も一般参加者に混じり、ツアーに参加してくれました。

「建築の魅力」は「街の魅力」につながり、「街の魅力」はそこで暮らす人たちの誇りとなり、生活の質の向上にもつながります。コロナ禍だからこそ、自分の身の回りの人や街の大切さに気づき、豊かな暮らしとは何かを再考するきっかけとなったのではないでしょうか。私たち「東京建築アクセスポイント」はこれからもいろんなヒト、モノ、コトを繋げる役割を担い、将来へ向けた幸せな街づくりの提言に向け、何らかの形で貢献していきたいと願っています。

東京建築アクセスポイント代表理事:和田菜穂子

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